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茶箱を使った探求
お茶の本質は、主と客がともに楽しい時間を過ごすこと、そして日常の中にある美しいものを楽しむ心を養うことだと、私は思っております。茶の湯は必ずしも茶室の内だけで行われるものではなく、古くから野外やさまざまな場所で行われてきました。もちろん、茶室の内外を問わず、厳しい稽古を十分に積んだ上であることが根本にあるのは理解しております。表千家流には茶箱について特別な定めがないことから、あそび心を持って楽しむためのかたちとして、「茶箱」はとても適していると感じました。
一昨年まで台北で茶室を構え、茶の湯をしておりました。現在は東京にて修練を続けながら、時に茶箱を用いてお茶を楽しんでおります。昨年は、欧州に住む友人を訪ね、再会を喜びながら一服。日本では、新潟県・杉野原高原の標高1800メートルに広がる壮大な景色の中で一服。また、都内の日本庭園で紅葉を愛でながら一服し、禅寺においては和尚様に一服差し上げるという、忘れ難くありがたい経験にも恵まれました。周囲には目新しいものや刺激が多い中で、あえて時間をつくり、主客が向き合って一緒にお茶をいただくことは、今の自分自身と向き合う時間であるのだと実感しています。日常の中にありながら、本格的で、そして気軽な一服を、楽しくご一緒できましたら本望です。
茶箱とは、携帯用の点前道具を最少限にまとめて収めた小さな木箱のことです。茶室の中に限らず、野外や、旅先などへも手軽に道具を持ち運び、ときに応じ場所を選ばずに茶を点て、主客ともに興ずることは古くから行われてきました。茶箱に組み入れる道具については、特に定められた決まりは無く、旅先で得た思い出の品や、友に贈られた一碗を、それにふさわしい茶器とともに組み込むとか、日ごろ気に入っている道具の一つを中心に取り合わせることもあります。そうした自由な工夫によって、気軽に一服のお茶を味わうことも、茶の楽しみの一つと言えるでしょう。なお、茶箱の扱いについては、表千家流において特別な点前の定めはありません。
Photo Credit: Manbo Key